健康被害だけじゃない!
床の傾きが引き起こす健康障害
地盤沈下によってドアや窓がしっかり閉まらなくなったなどの物理的な被害が生じていなければ、少々床が傾いている程度では特に問題ないだろうと思う人もいるかもしれません。しかしほんの少しでも勤務している建物の床が傾いていると、その傾斜によって大小の差はあれ必ずそこにいる人に生理的・精神的影響を与え、それがひいては健康障害を引き起こすということはご存じでしょうか。では傾斜の角度別にどのような健康障害が起こるかを見てみましょう。
傾斜角 | 健康障害 |
---|---|
0.29° | 傾斜を感じる |
0.34° | 不同沈下を意識する |
0.46° | 傾斜に対して強い意識、苦情の多発 |
0.6°程度 | めまいや頭痛が生じて水平復元工事を行わざるを得ない |
1°まで | 頭重感、浮動感を訴える人がある |
1.3° | 牽引感、ふらふら感、浮動感などの自覚症状が見られる |
1.7° | 半数の人に牽引感 |
2〜3° | めまい、頭痛、吐き気、食欲不振などの比較的重い症状 |
4〜6° | 強い牽引感、疲労感、睡眠障害が現れ、正常な環境でもものが傾いて見えることがある |
7〜9° | 牽引感、めまい、吐き気、頭痛、疲労感が強くなり、半数以上で睡眠障害が起こる |
毎日長い時間を過ごす場所に「傾斜がある」と意識するだけですでに生理的・精神的影響は発生し始めています。傾斜角が大きくなると具体的な健康障害が出て来ますが、そうでなくても「日常生活上の傾斜」は少しずつストレスとなって身体を蝕んでいくことになりますので、やはりできるだけ早めの対処が必要です。
床の傾きが企業に与える悪影響
さて、床の傾きによって生じる健康被害以外にも重大な問題があります。例えば工場や倉庫、店舗などの床がほんの少しでも傾いていると、台車が勝手に動いたり、作業で使用する機械が正常に稼働しなくなったりといった問題が発生しますよね。
具体的な一例を挙げると、荷物の運搬に使用されるフォークリフトは水平・垂直が保たれていなければ正常に動いてくれません。なんとかだましだまし使ったとしても、うまく稼働できる場所を探したり、向きを考えたり、一度に下ろしたり持ち上げたりするパレットの量を減らしたり・・・といった本来ならば必要ない負荷をかけることになってしまいます。
使用機材の故障は、毎日の順調な作業に影を落とすきっかけとなるだけでなく、そのせいで利益率が下がったり、納期が遅れたり、生産が滞ったり、最悪の場合は信用を失って倒産することにもなりかねません。
たかが床の傾きが会社をつぶすことにもなりかねないということを、経営者の方々は特に覚えておいたほうがいいでしょう。
社員の声を聞こう
工場や倉庫の床が傾いているのを放置することは、企業にとって大打撃となることがよくわかりますが、実際に毎日その場所で長い時間を過ごすわけではない上層部はなかなか床が傾いていることに気づきにくいという現実があります。気づいたときには床の傾きによって生じた問題が会社の利益を圧迫し始めていた、というのでは遅すぎますよね。
そういった事態を避けるために、まず必要なのはこまめに社員の声を聞くことです。
社員とこまめにコミュニケーションを取り、その声に耳を傾ける姿勢があれば、ほんの小さな異変の段階で気づくことができます。